今、音楽界に時代の寵児と思われる2つのグループがいる。1組目はK-POPのNew Jeans、2組目は日本のYOASOBIだ。 New Jeansは2022年にデビューすると約1年後に全米アルバムチャート1位を獲得したばかりか、K-POP勢として初めてロラパルーザ・シカゴのステージに立ち7万人の観客を熱狂させた。
彼女たちのすごさは色々あるが、まずはその語学力。母国語の韓国語に加えて英語はもちろん、世界ツアーに行けば中国語や日本語などその国の言語も勉強して話してしまう。そしてダンス力。彼女たちのダンスは今までのK-POP勢のように一糸乱れずという感じではなく、あえて少しずつ異なる動きをするが、それが自由さ、躍動感につながっていて見ていて本当にワクワクする。そして最後はそのヴォーカル力。全員ソロとして独り立ちできるほどの力を持っている。彼女たちの音楽の根本となるリズムも従来ダンス・ミュージックで多用されるビートを使用せず、新しいリズムをとり入れている。
日本ではYOASOBI。昨年末の紅白歌合戦でもおそらく一番の盛り上がりを見せたのが彼女たちのステージであったと思うし、世界中で彼女たちの歌を日本語で歌って盛り上がっている動画をよく見かける。ロサンゼルスで行われた音楽フェスでは、アメリカ進出を果たし、多くの観客を熱中させ「こういう音楽を望んでいた」「YOASOBIがすべての出演者の中で一番だった」「心に火がついたようだ」などと話す観客もいた。
圧倒的な若さと才能を持ち合わせ順風満帆なNew Jeansに対し、YOASOBIの2人は正反対の船出だった。ヴォーカルのikuraさんは幾田りらとして高校生から曲を作り、ストリートライブをするも、同じようなアーティストがたくさんいる中で違いを出せなかった。コンポーザーのAyaseさんも地方からメジャーデビューしようと上京するも所属バンドは鳴かず飛ばず。毎日どこで死のうかと東京の街を歩いていたという。最後には心労で入院し、彼の音楽人生は終わったかに見えた。しかしそこから日本の音楽を研究し、新しい物との融合を考えだした。そこで彼がまず研究したのがボーカロイド技術。ボカロで曲を作り、ネットに動画をあげるとそれが世間でだんだん話題になり、やがてレコード会社の関係者の目にとまることになる。新しいが懐かしいという両方を持ち合わせた曲ができた。そこへ幾田りらさんが加わりYOASOBIが結成された。「アイドル」という曲は幾田りらさんが、自分の殻を破りikuraさんとしてボカロのように歌うことで出来上がったらしい。
世の中にはNew Jeansのように挫折もなく、まさに彗星のごとく現れるような人たちもいる。かと思えばYOASOBIのように挫折を重ね明日生きることすら諦めかけた人たちもいる。どんなに辛くとも努力を惜しまない姿勢は、自分がアピールしなくとも誰かが見てくれている。その意欲を失わない限り雲間から光は射してくるものだ。
私は12年前に塾講師として復帰して以来、今年は初めて受験学年を持たないという1年を過ごした。代講をしたり、9月からは数学の補講に入ったり、質問対応をしたりすることはあったが、通年の授業は持たなかった。しかし中3生のことは陰ながら良く見ていた。私立や前期入試や高専の入試がうまく行かなかったからといって決して腐ってはならない。したいことも我慢し勉強に打ち込んだ姿勢は、必ずどこかで評価をされることになる。テストには大きく傾向に違いがあり、自分が得意な分野がたくさん出題されることもあるのだ。希望というものは絶望の3歩ぐらい先にあるものだと私は思う。希望の扉は、かくれているように見えてもすぐそこにあるのだ。時代の寵児と言われる人に共通しているのは、たゆまぬ努力、諦めない心、柔軟な発想である。
進学塾オネスト鈴鹿校 中根 眞澄