先日、名古屋へ「洋館で和」というライブを見に行ってきました。箏奏者の中井智弥さんの演奏を見るためでした。中井さんは津市出身で二十五絃箏というまだ歴史が新しい箏を演奏している音楽家です。実はこのライブ、名古屋の覚王山の揚輝荘という元は迎賓館として利用されていた洋館の改修10周年を記念して無料で行われているものでした。応募者多数で抽選になりましたが、なんと当選したのです!
彼との出会いは2年3か月前、地元のホールのこけら落としのコンサートでした。あのとき涙が滝のようにあふれ出したのを鮮明に覚えています。それからまたいつか再会したいという気持ちはありましたが、日本全国というより世界でコンサートをしている方なので中々地元の三重にも帰って来られず、私の仕事の休みも日曜だけなので、ひたすら情報を集めるだけとなっていました。チャンスは約1か月前に訪れました。彼の公式LINEから「9月24日にライブがあります。」というお知らせがあり、ダメ元で応募してみました。抽選結果はライブ1週間前。当然「残念でした」という内容のメールが来ると思っていたのに全く思ってもみなかった当選メールがきました!自分にはまったく似つかわしくない高貴な場所でしたが、とてもいい雰囲気の中で最高のライブを堪能しました。
まずはお馴染みのジャズナンバー「枯れ葉」から。前回も度肝を抜かれましたが、この曲は明らかなジャズの曲で1オクターブしかなくシャープもフラットもない箏で演奏できるはずがない曲をいろんな場所を押さえて演奏していました。また曲が変わるごとに「ことじ」の位置を変え演奏していました。中井さんが演奏している箏は二十五絃箏といって30年ぐらい前に開発された新しい箏で、従来の日本の琴とはかなり違いがあります。もちろん基本は琴の音色に聞こえるのですが、時にはハープのように時にはギターのようにさえ聞こえます。また弦を大きくはじいたり木の部分を叩いたりして、さながら一人オーケストラのようにさえ聞こえた瞬間もありました。この日もまた途中から涙があふれだし、ずっとハンカチで涙を拭きながら見ていました。ライブ終了後物販がありCDを購入するときに少しだけお話をすることが出来ました。話そうとするとまた涙があふれてきてほとんどまともに会話もできませんでしたが、「これからも応援しています」という気持ちだけは伝えることが出来た気がします。
このCDの中の「花のように」という曲は、彼がいろんなことに行き詰まり音楽を辞めようと思い、最後に一番いい曲をという気持ちで2009年にリリースされた曲です。この年にベトナムで行われた日本とメコン川流域の国々との交流イベント「日メコン交流」のオープニングでこの曲が演奏されると、集まったベトナムやラオスやカンボジアの人々からものすごく温かい拍手を頂き、それが今の彼のエネルギーになっているのだという話を今回初めて聞きました。人を怒らせたり悲しませたりすることはとても簡単なことですが、人を笑わせたり幸せにしたりすることは一朝一夕にはいきません。地道な努力を続けることによって今のような神がかった状態になったのだと感じました。今の世の中は何かと暗い話題ばかりです。しかし彼の演奏で心が洗われる感覚がして、その日はとても満ち足りた気分でした。
私自身も紆余曲折の末、教育という道を選びました。かなり歳をとってしまいましたが、このブログを書いている時に「先生に教えてもらったところがテストに出て全部できたよ。」と言ってくれた生徒がいました。微力ながら役に立っているのかなと思えた瞬間でした。残りの塾講師としての人生も花のように過ごせたらと思います。
進学塾オネスト鈴鹿校 中根 眞澄